地図にない奈良・地図をつくる奈良



これはFOSS4G Advent Calendar 2012参加による12/12分の記事です.

 今日は1212日,一部では「121212121212秒に何かが起きる」と言われていましたが,自分のみの周りでは何も起きませんでした。これからそうなる地域もあるので,もう半日ぐらいは注意深く世界のニュースを見ておきたいところ.

 1年前のアドベントカレンダーではOpenStreetMapOSMhttp://www.openstreetmap.org/)の開発者・ユーザの国際会議であるState of the MapSotM)の開催地も未定で,東京が立候補していたころだったのですが,その後開催地が東京になり,そしてSotM2012 Tokyoもこの9月無事に開催されました(FOSS4G Beijingはキャンセルされてしまいましたが).
 そうしたイベントが一段落して,最近考えているのは当方の地元奈良でのFOSS4GFree Open Source Software for Geospatial)やOSMの普及についてです.関西は,日本国内においてFOSS4GOSMの活動が盛んな地域であることは,多くの方がご存じのことと思います.開発者やユーザの集う国内カンファレンスであるFOSS4G Osaka2009年から毎年開催されており,FOSS4G Osaka 2012では地元の発表者の方もかなりいらっしゃいました(これは大阪市大を中心とするアカデミックな組織の存在・継続的な支援も大きいと思います).またOSMのローカルコミュニティであるOSM関西の活動も活発で,オリジナリティあふれる活動を行うアクティブメンバーが多いのですが,そうした関西全体の動向と比べて,奈良での認知度・活動の活発さはまだまだのように思います.
 そこで先日,201212月3日に国土地理院が主催する関西G空間フォーラム in 奈良で報告を行ってきました.既に何度かOSMFOSS4G関連で話したことのある内容を組み合わせて持って行ったのですが,これまでににいた人々とは聴衆の層が全く異なり,少しはこれまで笑いがとれていたような内容や動画も,全くの笑いゼロで,あまりのいたたまれなさに途中で帰ろうかと思ったくらいですが,何とか最後まで話をして帰ってきました.

(当日のプレゼンテーションです)

 では,奈良でFOSS4GOSMを取り組む意義はどのあたりにあるのでしょうか.
SotM 2012 Tokyoでも少し紹介させてもらいましたが,奈良県の山間地域は,インターネット上の地図サービスが行き届いていない地域です.

 例えば十津川村では,google mapszoomレベル17の詳細地図のスケールでのデータはありません.
(左がOSM,右がgoogle maps

 奈良県内でも奈良市中心部だと当然このレベルの詳細地図はあります
(同様に左がOSM,右がgoogle maps

 google mapsは同じようにゼンリンの地図を使っているはずなのに,なぜこのような違いがあるのかと少し気になって調べてみたのですが,ゼンリンが販売しているデジタル地図の収録範囲が影響しているようです.

 まず紙ベースの住宅地図の奈良県内の収録範囲を確認してみましたが,ゼンリン住宅地図プリントサービスでのの奈良県をみてみると,


 ここにはきちんと十津川村も収録されていることがわかります.住宅地図の現物も確認してみましたが,先ほどmap compareで示した十津川温泉周辺の範囲も含め,明らかに山間の森林しかないであろう箇所以外,地図は網羅されていました.

 それではgoogleがその辺りのデジタル地図を買っていないのではないのかと思い,ゼンリンのいつもNAVIでみてみても,詳細地図はありません.


 さらに奈良県のgoogle mapsやゼンリンのいつもNAVIを丹念に見てみるとzoomレベル17で等高線や建築物の外形など入っていないのは,奈良県内では十津川村・下北山村・上北山村・野迫川村・天川村・川上村・東吉野村・御杖村・曽爾村・山添村で奈良県内の村はほぼ全滅(なぜか黒滝村だけ詳細地図データがあります).五條市は2005年に合併した旧西吉野村・旧大塔村辺りもあります.

 このリストに関連すると思われるのが,
ゼンリン電子地図帳Zi15の収録エリアの情報です.


 奈良県の収録エリアに入っていない町村が,先ほどのリストにぴったり合致します

 ということは,住宅地図はあるけど,デジタル地図データ化されていない地域が奈良県含めまだ日本中にはたくさんあるということみたいです(なぜそうなっているかについてはわからないのですが,ファイルサイズとコンテンツの関係の問題?村には基本的に市街地がないという判断?大人の事情もあるのかもしれませんが,そのあたり含めて知りたいところでもあります)

 これらの地域はインターネットを介して従来の地図サービスを利用することが難しいため,OSMはこうした地域にもっとフォーカスを当てて活動を広げていく必要があるように思います.

 一方,奈良県でも,一般に向けて公開されるようなweb-GISの活用はまだまだ進んでいないのが現状です.例えば,昨年の紀伊半島大水害の復興ポータルでは,GISを活用した復興マップの公開が謳われていますが,現状ではデスクトップGISで復旧状況などのプロットが行われて,そのスクリーンキャプチャが切り出されているだけで,GISデータとしての活用ができる状態にはなっていません.

 奈良県の山間地域は災害の頻発地域でもあります.予算的な問題があって,商用のGISのシステムや地図コンテンツをそろえることが障害のひとつとなっているのであれば,FOSS4Gを活用して,web-GIS構築を行うことも考えられると思いますし,コンテンツについてもOSMはもちろん,国土地理院との地理空間情報の活用促進のための協力に関する協定を活用した取り組みを行うことも可能なのではないかと思います.





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